日本エステティック協会加盟 エステタイム

尋常性ざ瘡(ニキビ)Part 4

エステタイム顧問医師 庄野又仁先生のコラム

5月中旬から、日中は夏のように暑い日が続きました。終日薄着で過ごしてしまい、朝方の冷え込みで風邪を引いてしまう方が多くなっています。手洗い・うがいの他にも衣類や寝具をうまく調節することで、体調管理をするようにしましょう。また、アウトドアでの活動が増加し、虫刺されもよく見かけます。“たかが虫刺され”と思いがちですが、掻き壊してしまうと非常に厄介です。屋外でのイベントなどでは虫除け対策も怠らないようにして下さい。


前稿では、実際に使用されるニキビ治療薬のうち抗菌薬を中心に御紹介しました。本稿では、抗菌薬の以外のニキビ治療薬や、海外での治療法を御紹介したいと思います。まずは前稿の続きのホルモン療法についてです。

ホルモン療法

男性ホルモン(アンドロゲン)はニキビ、特に面皰(非炎症性ニキビ)の発症に深くかかわるホルモンです。アンドロゲンは、毛穴に存在する表皮細胞のアンドロゲン受容体に結合して作用を発揮しますが、その部分に介入することでニキビの発症を抑えるのがホルモン療法の基本になります。実際に関わってくる主な男性ホルモンは、テストステロンとジヒドロテストステロンの2種類です。とくにジヒドロテストステロンの作用は強力です。大人のニキビ(思春期後ざ瘡)において注目されているのが、血中男性ホルモンの高さです。特に女性においては、卵巣や副腎由来の男性ホルモンが高い状態が、難治性ニキビの病態に深く関わっていると考えられています。
海外ではニキビに対するホルモン療法はあまり敷居が高くない治療法です。作用点としては男性ホルモン作用をブロックする方法、男性ホルモン産生をブロックする方法に大きく分かれます。以下に代表的なものを列記します。

①男性ホルモンの働きをブロックする薬
 スピロノラクトン,フルタミド、酢酸シプロテロン

②男性ホルモンの産生をブロックする薬
 グルココルチコイド,経口避妊薬,プレグナンジオール,ダナゾール

漢方

漢方薬は、自然の草木から抽出した「生薬」を組み合わせた薬です。構成成分となる生薬は重複することが多々あります。その生薬には、ニキビ治療に役立つさまざまな効能が報告されており、抗菌薬と共に併用することで、さらにその効果を発揮します。以下に本邦でよく使用される漢方をご紹介します。

[清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)]
清上防風湯は、ニキビ症状の改善に効果のある生薬が含まれています。まず、防風(ぼうふう)・薄荷(はっか)・荊芥(けいがい)・川芎(せんきゅう)等の生薬は末梢血管を拡張させ、発汗や熱の発散を促進し、炎症を抑える働きと鎮痛作用があります。次に、山梔子(さんしし)・黄連(おうれん)等は消炎鎮痛効果の他、抗菌作用を有し、桔梗(ききょう)・枳実(きじつ)は、解毒作用や排膿促進作用を発揮します。このような作用が複合的に作用するため、清上防風湯は化膿している皮疹が中心のニキビに適していると考えられます。

[桃核承気湯(とうかくじょうきとう)]
桃核承気湯は、大黄(だいおう)・芒硝(ぼうしょう)・桃仁(とうにん)・桂皮(けいひ)・甘草(かんぞう)を主な生薬とする方剤です。通常、女性の月経不順や月経困難症、腰痛、便秘、高血圧に伴う諸症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾などに効果がありますが、女性の月経に伴う症状の改善とともにニキビ症状が軽快します。したがって、便秘体質や月経不順の女性の方のニキビに向いている漢方薬です。

[その他]
ニキビ治療に用いられる漢方薬には多数あります。清上防風湯と同じような作用を持つ荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は代表的です。また、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、ホルモンバランスを調整し、女性の月経不順や更年期障害に用いられますが、桃核承気湯と類似した作用と言えます。その他、解毒作用に重きをおいた十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)や排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)などもニキビ治療に使用される漢方薬です。

海外で認可されている治療薬

ここまで、ホルモン療法の一部を除くと本邦で実際に行われている治療になります。しかし、海外におけるニキビ治療の核となる治療薬は本邦とは異なります。特に欧米において、ニキビ治療の基本となるのはレチノイドと呼ばれるビタミンA誘導体の内服療法です。合成レチノイドの一種であるイソトレチオニン(13-cis retinoic acid/13-シスレチノイン酸)は、ニキビ治療に対して極めて効果的な薬剤で、スイスのRoche社からロアキュテイン®という商品が発売されています。この薬剤の作用メカニズムで最も重要なのが、分泌腺組織を萎縮させる効果です。皮脂腺も例外ではなく、強力にその作用を抑え、ニキビの根本的な原因となる皮脂分泌自体を減少させ、さらにその効果は皮脂腺組織が回復するまで、比較的長期にわたって発揮されます。このような強力な薬が本邦で未承認であるのは、その強い副作用が大きく懸念されるからです。特に、重要な副作用が“催奇形性”で、近いうちの妊娠を望んでいる方、現在妊娠中の方、授乳中の方は内服することはできません。また、内服終了後も最低限、半年間は避妊が必要になります。男性も内服中はそれに準じて避妊をしなければなりません。
欧米では早くからニキビによる整容面への影響を疾患単位としてとらえる傾向が強く、大変期待されていた薬でした。一方、日本においては、ニキビは“青春のシンボル”と捉え、病的意義の乏しいものとして扱われていた節があります。その後、個々人の体質の違いの重要性、整容面の問題が精神面へ及ぼす影響の重要性を考慮すると、やはり治療に必要な選択肢となる薬剤と考えられるようになってきました。以上のような背景もあり、本邦では現在、取り扱いのある病院・医院を介して医学的管理のもと、自費にてイソトレチオニンの内服治療を受けることができます。

ケミカルピーリング

ケミカルピーリングは、化学物質を塗布し、皮膚を一定の深度で剥離させ、創傷治癒の観点から皮膚の再生を促進する治療法です。比較的簡単に行える治療法ですが、使用する薬剤や個人の手技、治療時の皮膚状態により効果が大きく変わってくるため、Evidenceに基づいた評価が難しい方法です。ニキビにおいてケミカルピーリングが効果的と報告される根拠には、角栓(毛穴の詰まり)融解により、面皰や小丘疹を改善させ、毛穴に溜まったアクネ菌を減少させる点、皮脂腺の活動を抑える点、創傷治癒機転によりコラーゲン線維の生成が促進される点などが挙げられています。
具体的な手法としては、洗顔で皮脂を除去した後、アルコールやアセトン類で脱脂を行います。その後、α‐ヒロドキシ酸(α-hydroxy acid:AHA)と呼ばれるグリコール酸や乳酸、サリチル酸マクロゴールなどのピーリング剤を刷毛などを用いて皮膚に塗布します。ピーリング剤は酸性の溶液なので、所定の時間が経った後に、弱アルカリ性の溶液で中和します。その後、洗顔、クーリング(冷却)を行います。
ただし、人工的に皮膚を剥離することは、皮膚にとっても負担になるため、さまざまな注意事項があります。酸による皮膚への刺激により、炎症が悪化する可能性があります。そのため、酸の濃度や塗布時間にもよりますが、疼痛や赤みなど炎症が強いニキビでは、まず抗菌薬による治療を優先することになります。また、重症のニキビでは、飽和脂肪酸などの皮脂が皮表に多く存在しますが、セラミドなどの水分保持成分が乏しくなっています。冬場など乾燥する季節では、ピーリング前の皮膚の水分量や日々の保湿ケアを十分に行うよう注意が必要です。


本稿を含め4回にわたり、ニキビ治療について取りあげました。ニキビの治療には、抗生剤やレチノイド誘導体の内服や外用、漢方・ホルモン療法、ケミカルピーリングの他に、光や高周波を用いた治療法などもあります。また、ニキビとストレスは非常に密接な関係にあり、ストレスがニキビを誘発すること、逆にニキビ(特にざ瘡瘢痕)が整容面に与える問題によりストレスを受けることも多々あり、メンタル面での介入もニキビ治療で必要になる場合があります。
治療の選択肢は一昔前に比べかなり広がっています。今後、個人の肌質や症状、また心理社会的背景も含めて、総合的に最も好ましい治療法の組み合わせを検討することが非常に重要になってきます。

エステタイムは、脱毛・痩身・フェイシャル(美顔)で女性の美をサポートします。

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