日本エステティック協会加盟 エステタイム

尋常性ざ瘡(ニキビ)Part 1

エステタイム顧問医師 庄野又仁先生のコラム

1月初旬頃から空気の乾燥が著しく、静電気でビリッとすることが多くなりました。毎朝、起床したときに喉がイガイガする方は、加湿器の使用や暖房器具の組み合わせを工夫してみましょう。
エアコンだけでは低湿度となり、喉や鼻の粘膜が傷みやすくなるため、オイルヒーターや電気ヒーターなども併用しましょう。電気ヒーターは速暖性に優れているので、すぐに温まりたい方にはお勧めです。また、葉の多い観葉植物などを部屋に置くと低湿度が改善します。
暦の上では、もう立春を過ぎましたが、まだまだ気温の低い日が続きます。気を緩めずに、手洗い・うがいもしっかりと継続していきましょう。


本稿では、尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)すなわち“ニキビ”について取り上げたいと思います。ざ瘡は、思春期に好発する一般によく見られる疾患で、思春期以降は徐々に軽快する経過をたどりますが、最近では25歳以上の成人にもみられる「大人のニキビ」も増加しています。主に、顔面や上背部、前胸部など正中の“脂腺性毛包”が集まるところに出現します。

毛包(毛穴)の種類

先ほど脂腺性毛包という言葉がでましたが、毛穴にはその他に終毛性毛包や軟毛性毛包などがあります。
下記のようにまとめられます。

脂腺性毛包(しせんせいもうほう)

②終毛性毛包(しゅうもうせいもうほう)

③軟毛性毛包(なんもうせいもうほう)

順番に説明しますと…

①脂腺性毛包とは、大きく発達した皮脂腺を豊富に持ち、皮脂分泌が活発な毛包をさします。細く短い毛が毛包開口部からわずかに認められますが、産毛さえも認められない毛穴も存在します。先述の如く、顔・胸・背中の体の中心のラインに主に分布しています。

②終毛性毛包とは、頭髪やヒゲ、脇毛といった比較的太くしっかりした体毛を生やしている毛包をさします。皮脂分泌は盛んですが、長く太い毛が伸びるに伴い毛包内の皮脂も充分に排出されるため、皮脂が毛包内に貯留・停滞することは稀で、“ざ瘡(ニキビ)”が発生しにくいタイプの毛包です。

③軟毛性毛包とは、その名の通り、体幹や四肢の産毛のような軟毛を生やしている毛包をさします。病理組織学的には脂腺が発達しておらず、皮脂の分泌がほとんど無い毛包です。成長の過程で先ほどの脂腺性毛包や終毛性毛包に変化することもありますが、軟毛性毛包の状態では皮脂分泌がごくごく微量のため、ざ瘡が出来る下地がありません。

以上より、上記3種の毛包の中で、ざ瘡と関連するのは脂腺性毛包ということになります。

ニキビ発症のメカニズム

大きく2つの段階に分けることができます。

<第1段階>面皰(めんぽう)形成過程
ニキビの発症の原因に、“毛穴の詰まり”というのをよく耳にします。
医学的には、男性ホルモン(特に、テストステロン)が皮脂腺に分布している男性ホルモン受容体と結合すると、当該皮脂腺は皮脂分泌を亢進させます。(※男性ホルモンは男性では大部分は精巣で、一部は副腎で生産され、女性では、副腎と卵巣からの由来です。)皮脂分泌が過剰な状態になり、効率的に皮脂が排出されなくなると、毛包管内に皮脂が停滞し、その管の内側は徐々に狭くなります。
また、脂腺性毛包の開口部付近(毛包漏斗部)の細胞は角化しやすく、脱落すればフケになりますが、脱落しないでその場に固着すると、貯留角化を引き起こします。毛包の出口部分に貯留角化が起こると、その部分が閉塞し皮脂が正常に排出されなくなります。角化物質、停滞した皮脂とともに、皮膚常在菌であるPropionibacterium acnes(P. acnes:アクネ桿菌)も停滞します。これらが集まり、小さな塊ができた状態を“微小面皰”といいます。
時間の経過とともに、皮脂や角化物質が貯留し更に大きくなって肉眼的にも皮膚の盛り上がりが確認できるようになった状態を“面皰”といいます。洗顔の際に、ざらざらとした感触があっても外観上、常色でどこにあるか肉眼的にはわかりにくい場合があります。(※さらに細分化すると、常色で毛孔一致性の丘疹を閉鎖面皰といい、毛孔(=毛穴)が開大し酸素に触れ中央が黒く見えるものを開放面皰といいます。)
女P.acnes(以下、アクネ桿菌)は、好脂性の通性嫌気性菌であり、代表的な毛包内常在菌です。面皰のように毛包管内に皮脂が貯留した状態は、アクネ桿菌にとって格好の生息域になります。結果として面皰形成時にはアクネ菌の菌数は増加し、次の第2段階に繋がります。

<第2段階>炎症惹起過程
面皰で増加したアクネ桿菌は、遊離脂肪酸や細胞外炎症惹起物質であるプロテアーゼ、ヒアルロニダーゼ、さらに好中球を呼び寄せる“好中球遊走化因子”を放出します。炎症性皮疹には赤々とした“紅色丘疹”や膿が肉眼的に見える“膿疱”などがあります。さらに、好中球(白血球の一種)が、好中球遊走化因子で呼び寄せられ、毛包に到達すると、活性酸素(本来ならば異物や細菌などにダメージを与える作用がある)を放出し、毛包の構造そのものを破壊していきます。炎症が収束する頃には、毛包壁が破壊され線維化し、瘢痕を残して整容的に問題となる場合が出てきます。以前、“ニキビ”は、青春のシンボルと呼ばれ、疾患概念として社会的にあまり取り上げられない傾向にありましたが、近年はメンタル面に与える影響も考慮され、治療薬の承認や早い段階からの対策が取られるようになりました。

診断と鑑別診断

脂腺性毛包が分布する顔面や前胸部、上背部に、毛孔一致性のう常色丘疹である面皰や、炎症反応を起こした紅色丘疹や膿疱が認められることが診断のPointになります。尋常性ざ瘡と類似した症状を呈する病気には以下のようものがあります。

  1. 毛包炎:アクネ桿菌ではなく、表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌等が毛包に感染し炎症を起こしたもの。毛嚢炎とも呼ばれます。脂腺性毛包以外にも、終毛性毛包や軟毛性毛包のいずれにも生じるため、足や側腹部などにも毛包炎は生じます。
  2. マラセチア毛包炎:アクネ桿菌ではなく、癜風菌(マラセチア)という真菌(カビ)が毛包に感染して炎症を起こしたもの。アクネ桿菌と同じように、癜風菌は皮脂を好む性質があるため好発部位がニキビと似ています。通常の治療で難治な“ニキビ”に、マラセチア毛包炎が隠れているケースがあります。顕微鏡でカビの菌糸や胞子が確認できれば確定診断ができます。
  3. 酒皶(しゅさ):温熱刺激やストレスにより誘発される顔の一過性の発作性の紅斑(赤味)のことで、やがて持続性になり脹れや毛細血管の拡張を認めるようになります。俗に、赤鼻や赤ら顔と言われます。さらに、持続性紅斑の中に“ニキビ”と類似した丘疹や膿疱が多数できることもあります。原因不明で、体質や遺伝が関係しているとも報告されています。「酒」という文字が入っていますが、アルコールは関係ありません。面皰形成が無い点が、ニキビと異なります。
  4. 酒皶様皮膚炎(しゅさようひふえん):顔面にステロイド外用薬やタクロリムス外用薬(免疫抑制薬)を不適切に長期間することにより、“ニキビ”や“酒皶”と類似した病変を生じる疾患のことで、酒皶とは異なり、原因がはっきりしています。
  5. ステロイドざ瘡:比較的若い年齢層の方がステロイドの全身投与(内服・点滴等)による治療を受けた際に脂腺性毛包が豊富な部位(顔面、前胸部、上背部など)に“ニキビ”と類似した病変が生じることがあります。ステロイドの投与量が減ると症状が改善します。また、ステロイド以外にも、抗うつ薬や抗がん剤(特に分子標的薬剤)、抗ウイルス薬などによりざ瘡様皮疹が生じることが報告されています。

尋常性ざ瘡(ニキビ)は身近な疾患でありながら、本邦では“青春のシンボル”として扱われ、社会的に疾患概念としての認識が乏しく、あまり積極的な治療や介入が行われていませんでした。それに対し、欧米では早くから病気として捉え、そのメカニズムの解明や治療薬の開発が進められてきました。実際に、欧米で広く使用されている治療薬の中には、本邦では未だ承認(保険適用)に至っていないものも存在します。次回は、治療やスキンケアのTopicsを扱っていきたいと思います。

エステタイムは、脱毛・痩身・フェイシャル(美顔)で女性の美をサポートします。

Copyright(C)2016 ESTHETIME All Rights Reserved.