日本エステティック協会加盟 エステタイム

夜間頻尿(nocturia)

エステタイム顧問医師 庄野又仁先生のコラム

2014年10月7日、スウェーデン大立科学アカデミーはノーベル物理学賞の受賞者を発表しました。喜ばしい事に、LED(青色発光ダイオード)を開発した、赤崎勇さん、天野浩さん、中村修次さんの日本の3名が同時に受賞しました。物理学賞としては、2008年以来6年ぶりになります。
また、その前日2014年10月6日には、ノーベル生理学・医学賞が発表されました。受賞したのは、John O’Keefe教授(英ロンドン大学)、May-Britt Moser教授とEdvard I. Moser教授(ノルウェー科学技術大学)の3名です。後者2名は夫婦での受賞です。受賞した理由は、「自分の今いる場所、また、どこへ向かっているかを認識する」細胞(いわゆる、脳内GPS細胞)の発見への貢献です。GPSとは、全地球測位網(Global Positioning System)の略称で、複数の衛星からの信号を受信し、自身の現在位置を測定するシステムです。O’Keefe教授は、1971年にラットが特定の場所にいる時だけ、活動する神経細胞の「場所細胞」(脳の海馬という部位に存在)を発見しました。Moser教授夫妻は2005年に、海馬に隣接し、脳内で空間・認知地図を形成するのに必要な情報を与える「グリッド細胞」を発見しました。これらの知見は、いまだ多くが未知の世界である脳神経科学の分野にスポットライトを当て、今後、脳神経科学における未知の領域の解明に対する大きな期待を世界中にもたらしました。
医療、介護の分野では認知症における徘徊の問題などに大きく貢献することになると思われます。


高齢化社会の進展とともに夜間トイレのため覚醒してしまうという事で、お困りの方を多く見受けられるようになりました。また、御自身でなくとも、親御さんや身近な方でお困りであるという話もよくお聞きします。本稿では、夜間頻尿について簡単にご紹介したいと思います。

夜間頻尿とは?

“就寝中に1回以上の排尿のために起きなければならず、困っている状態”と定義されています。なかでも、夜間2回以上排尿するケースでは死亡率の増加につながるという報告例があります。
また、夜間覚醒し、トイレに行く行為が転倒のハイリスク因子であり、骨密度が減少し骨脆弱性を有する方では、転倒により骨折などの合併症を引き起こしてしまい、QOL(=生活の質)が著しく損なわれます。夜間頻尿は、英語ではnocturiaと訳され、noct-が『夜間の~』uriaが『尿』を意味します。

原因を3類型に分類

日本泌尿器科学会では、原因別に下記に示す3つのカテゴリーに大きく分けて、本疾患にアプローチしています。

1.多尿(夜間多尿)

2.膀胱容量の減少

3.睡眠障害

この分類で、『1.多尿(“夜間多尿”)と、“夜間頻尿”は同じではないの?』と疑問を持つ方が多くいらっしゃいます。実際、夜間頻尿の原因の半分以上を占めるため、混同してしまいがちです。
・【夜間頻尿】は冒頭で紹介した、“就寝中に1回以上の排尿のために起きなければならず、困っている状態”のことを指します。
・【多尿】とは、24時間総排尿量が、体重(kg)×40を超える状態を指します。例えば、体重50Kgの方であれば、24時間排尿量が2000mlを超える場合、多尿の状態であると言えます。
・【夜間多尿】とは、“夜間多尿指数”(NPi:Nocturnal Polyuria index)=夜間尿量÷24時間排尿量:という概念があり、この夜間多尿指数(NPi)が、若年成人では0.20,65歳以上では0.33を超えれば、夜間多尿の状態であると言えます。

学術用語や略語が出てきて分かりにくくなってしまいました。簡単に言い換えると、『日中起きている時に比べ、夜間就寝時に尿が多く出る傾向(=体質)にある状態』というのが“夜間多尿”です。したがって、“夜間多尿”であっても、排尿のため一度も覚醒することなく、ぐっすり眠れているならば、“夜間頻尿”には該当しません。

各類型の詳細

①多尿(夜間多尿)
この症状の原因の多くは、夕方以降の水や利尿作用を有する飲料、アルコール等の多飲が挙げられます。その他に、慢性的な下肢浮腫(うっ血性心不全、下肢静脈還流不全、慢性腎不全などがベースにあることが多い。)、神経変性疾患(Parkinson病、アルツハイマー病)、薬剤性(利尿剤、抗うつ薬など)によるもの等がしばしば見られます。また、頻度は少ないですが抗利尿ホルモン(ADH: anti-diuretic hormone)であるバソプレッシンの分泌低下により、利尿作用を止められず多尿になる疾患(尿崩症)も含まれます。

治療には、まず夕方以降の過度の飲水の制限が第一となります。また、慢性的な下肢浮腫によるものでは、ベースとなっている疾患の治療が第一となります。そして“昼間の飲水制限が有効である。”という考えもあります。というのは、昼間の飲水が下肢に貯留し、夜間臥床した際に重力の関係で心臓に戻り、過剰となった水分が尿として排泄されることが想定されます。しかし、実際に昼間の飲水制限により症状が軽快したという介入試験による確実なEvidence(=医学的証拠)は今のところ報告されていません。その他の原因によるものも、まずは原因の治療または除去が第一になります。

②膀胱容量の減少
実際に膀胱容積が減少するもの、膀胱容積は減少しないけれども容積に見合った蓄尿ができないTypeのものがあります。

1.前立腺肥大症
男性では膀胱直下に前立腺と呼ばれる臓器があります。30歳頃から組織学的に肥大が始まり、徐々に進行し排尿症状を伴うようになると前立腺肥大症と呼ばれます。60歳で60%以上に認められ、高齢化社会の日本では“男性の国民病”と表現されるほど、よく見られる疾患です。男性ホルモンのバランスの変化が前立腺肥大の原因と想定されていますが、未だはっきりとした原因は解明されていません。前立腺の容積が増すことにより、直上にある膀胱に影響し膀胱容積が減少すると同時に、膀胱周囲の神経に作用して後述する神経因性膀胱・過活動膀胱を引き起こします。

2.神経因性膀胱
排尿・蓄尿には、大脳や脊髄などの中枢神経、自律神経を含む末梢神経が関与しており、膀胱や尿道括約筋の複雑な働きをコントロールしています。これらの神経回路が障害を受けると、排尿や蓄尿にトラブルを引き起こします。神経因性膀胱の症状は、①過活動型(蓄尿障害)と②低活動型(排出障害)に大きく分けられます。
夜間頻尿は①過活動型のTypeで、膀胱に少量の尿が蓄積されるとすぐに排尿したいという神経信号が大脳へ送られてしまいます。結果、トイレに何度も行く事になります(その際の排尿量は多くありません)。先程の前立腺肥大症など末梢神経でのトラブルや、脳血管障害(脳梗塞・脳出血)、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患など中枢神経でのトラブルなど、中枢・末梢の神経での障害が原因となります。

3.過活動膀胱
神経因性膀胱による過活動膀胱によるものが多く見受けられ、神経因性膀胱と同義と思われがちです(実際、神経因性による過活動膀胱は多く見受けられます)。ただ、非神経因性による過活動膀胱もあり重複(overlap)する部分があるという方が適切です。非神経因性のもので、よく見られるケースとして、骨盤底筋群の緩みが挙げられます。特に女性の場合、出産や加齢により膀胱・尿道・子宮などを支えている骨盤底筋群が機能低下し、尿漏れや排尿に関わる神経が障害を受け、過活動膀胱を引き起こす事があります。

4.膀胱がん、前立腺がん、間質性膀胱炎等
いずれも本来の膀胱容積の減少、機能的膀胱容積の減少をもたらします。

③睡眠障害
不眠症やうつ病、睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害をきたす疾患で夜間頻尿となりますが、睡眠障害については、成書を参考にして頂ければ幸いです。

治療について

基本的には、原因となっている疾患の治療となります。ここでは主に過活動膀胱についての治療を扱いたいと思います。過活動膀胱の治療の中心となるのは薬物療法であり、それに行動療法を併用することもあります。行動療法とは、生活指導、膀胱訓練(自分の意志で少しずつ排尿間隔を延長することにより膀胱容積を増加させる訓練)、理学療法(主に骨盤底筋訓練)、排泄介助など、低侵襲で副作用が少ないため本来ならば、まず行われるべき治療です。ただ、効果が出るまで時間を要し、また効果を実感できないケースも見られるため、薬物療法が治療の中心となる傾向があります。

①抗コリン薬
この種類の薬剤には、文字通りアセチルコリンの活動を抑える働きがあります(アセチルコリンは神経伝達物質で、膀胱平滑筋を緊張させる作用があります)。アセチルコリンを抗コリン薬で抑えることにより、膀胱の平滑筋を弛緩させ膀胱内に尿をより多く蓄えることができるようにします。
ただし、高齢者では便秘、口の渇き、認知機能低下などの副作用に注意が必要です。また緑内障(特に閉塞隅角緑内障)と診断されている方には眼圧上昇のリスクがあり使用不可となっており注意が必要です。

②α1受容体遮断薬
男性の前立腺肥大症に対する薬剤で、膀胱周囲に分布する尿道平滑筋や前立腺などに分布するα1A受容体やα1D受容体をブロックします。これらの受容体を遮断すると尿道が緩み、尿は出やすくなり前立腺肥大症の排尿障害症状を改善します。同時に、上述の抗コリン薬を併用したり、男性ホルモンを遮断する薬剤を併用したりすることによって前立腺自体を小さくすることで前立腺肥大症による頻尿症状を改善していきます。

③抗うつ薬・抗不安薬
本来はうつ病等の薬ですが、子供の夜尿症や遺尿症(おもらし)に適用があります。大人の場合、心因的な要素が強い時には使用すると効果があると考えられています。

④漢方薬
八味地黄丸、牛車腎気丸が夜間頻尿に適用があります。泌尿器系や生殖器系など下半身の機能低下に対し効果があります。上記薬剤と併用、または単剤で使用することもあります。


以上、夜間頻尿についての概略を述べましたが、その原因はあまりに多岐に渡るため治療に難渋するケースも散見されます。冒頭で述べたように、お年寄りでは転倒・骨折のリスク因子、ひいては寝たきりの原因となり得ます。排尿日誌なども活用しながら、自分の生活習慣を見直して根気よく原因を探していきましょう。

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